HP内の目次へ・検索もできます!   海外建築事情 『中欧から 16世紀のゴシック教会の内部改修、その業務報告』 設計者:三谷克人(建築家 TRANSPOLIS主宰、ウィーン在住)

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京都発大龍堂通信:メールマガジン通巻11860号 2015年11月08日
海外建築事情
『中欧から 16世紀のゴシック教会の内部改修、その業務報告』
設計者:三谷克人(建築家 TRANSPOLIS主宰、ウィーン在住)

plan bevor renovation
唯一残された前回の改修の平面青焼き

constructionsplan renovierung
一階平面施工図(全長35m 最大幅15m)

現存の19世紀の祭壇は
床面より高い古い基礎に乗っていた

入り口ホールより内陣を望む
[はじめに]
『建築討論』の編集者からお声がかかり、16世紀初頭に建立されたゴシック教会の内部改修プロジェクトのお話でよければ、と寄稿をお受けした。日本人建築家にとってこの種の仕事は前代未聞だろうし、旅では分からない発見もあった。コミュニティーの中心的存在であるこの建物は、様々な制度や仕組みで守られていて、職能の遂行は一筋縄ではゆかない。そのあたりを実務としてお話することに、意味があるかもしれないと考えた。
[実施にいたるまで]
当教会は高地オーストリアの州都リンツの東方約25㎞に位置する村、バルトベルク・オプ・デア・アイスト(Wartberg ob der Aist, Upper-Austria)にある。最初は木の小屋だったものが12世紀に石積みとなり、15世紀の「フスの乱」で破壊されたあと1508年に後期ゴシック様式で再建されて今日に至るという。
施主から相談があったのは、2012年の秋口だった。使い勝手を改善し新しい典礼の空間をしつらえたいという。そういう現場の要望には司教区庁(以下教会庁)が対応する。オーストリア・リンツ司教区には教会関係の建物が計2100棟あり、その約90%がいわゆる歴史的建造物。30年に一度は手を入れる必要が生じるというから、教会庁に営繕組織があっても不思議はない。とくに教会に関してはチェックが厳しく、計画の教義や芸術の専門家が睨みをきかせている。
教会庁はいまでも芸術の擁護者を自認し、需要があればアーティストの作品を登用することを旨とする。褒めるべきことだが決定権が教区民にある今日、アートとして興味深いものが実施に移されるとは限らない。でもそれは杞憂だった。芸術担当部門が推薦したドイツ人の女性アーティスト、ドロテー・ゴルツ(Dorothee Golz)は世界的アート展「ドキュメンタ」にも出展したプロ中のプロ。その大胆ながらも、教会のリブ・ヴォールトに出発点を求めたロジカルな造形で、民意を勝ち取ってくれた。
そうして実施設計が始まった。予算は付加価値税20%込みで7600万円。その4分の1は教会庁が援助するが、残りは施主の負担となる。まずアートに600万円が消える。新しい温水暖房の見積もりが800万、歴史的建造物を管轄する文化財保護庁(Bundesdenkmalamt)の特命工房が、長椅子変更の家具工事に1000万円を計上してきた。これで延床面積約500㎡、天井高10mの空間の改修が賄えるのだろうか? コスト上の不確定要素を限定するための事前調査も、使用中の教会ではままならない。仕方がない、教会庁にはゴー・サインを得るための予算案を提出しておこう。躯体工事を必要最小限に止め、残りを造作に振り当てるしかない。教区民による勤労奉仕が大きく工費節減に供することを期待しよう。
[建築家・三谷克人(みたに・かつひと)プロフィール]
1950年生まれ、建築家。京都大学建築系学科卒業後1979年にオーストリア渡航。ウィーン工科大学に在籍してウィーンの建築思潮研究、同時に実務を通じて当地の建築家の職能を習得。1992年コンペの一位入選を機に独立、建築と文化交流のスタジオ「TRANSPOLIS」設立。以降設計活動と共に文化交流に努める(「SD」誌 90/03 オーストリア特集、諸大学での講演などなど)。
オーストリア建築家中央連合会会員。
詳しくは
http://www.aij.or.jp/jpn/touron/6gou/foreign01.html



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