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京都発大龍堂通信:メールマガジン通巻10188号 2013年6月1日

『惜櫟荘だより』

著:佐伯泰英
発行:岩波書店
定価:1,575円(本体1,500円+税5%)
219p・20cm
978-4-00-025846-3

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岩波茂雄が静養目的で建てた熱海・惜櫟荘。譲り受けた著者が、修復保存を成し遂げるまでをつぶさに綴る。 熱海に仕事場を構える著者は、縁あって惜櫟荘を譲り受け、後世に残すため完全修復を志す。
一九四一年、岩波茂雄が静養のために建てたこの別荘は、江戸の粋を知る建築家・吉田五十八の感性と、信州人・岩波の海への憧憬から生まれた「名建築」だった。設計図もない中、パズルを解くような解体・修復工事が始まり、やがて、「五十八マジック」ともいうべき独創的な仕掛けが、次つぎ明らかに―。「名建築」はいかにして蘇ったのか?秘められた趣向とは?若き日のスペインでの思い出や、惜檪荘が結ぶ縁で出会った人々など、興味深いエピソードも交え、修復完成までをつぶさに綴る。好評の『図書』連載に加筆、写真も加えた、著者初のエッセイ集。
[目次]
文豪お手植えの;
仕事場探し;
鮑と文庫;
ティオ・玲二;
五十八の原図;
惜櫟荘解体;
作家と教師;
逗子のライオン;
四寸の秘密;
詩人と彫刻家〔ほか〕
[佐久間 文子・書評]
岩波書店の創業者岩波茂雄が昭和16(1941)年に建てた熱海の別荘を、縁あって譲り受けた。
この本はその惜櫟荘(せきれきそう)を完全修復するまでを描いた同時進行のドキュメントである。
9年前に熱海に仕事場を構えた縁で、惜櫟荘を知った。建築家吉田五十八の手になるすっきりと美しい和風建築だ。
「4年ほど前、岩波の代理人が別荘を手放すと知らせてこられたとき、この家が消えていくのを見過ごすのはいやだなと思った。無鉄砲といえば無鉄砲です」この時代の個人住宅の完全修復はあまり例がない。修復費用も含めいくらかかるかという計算は頭になく、失われようとするものを悼む思いだけがあった。決断は早くふた月弱で買い取りを決めた。
当時の図面はない。建物を計測し、設計図を引き直すことから始めた2年を佐伯さんはほんとうに楽しげに語る。「70年前の大工が仕掛けた謎を、いまの棟梁が対話するように必死で推理するんですから。それは面白いですよ」書き下ろし文庫の時代小説の書き手として「職人好きの職人作家」を自負する人だけに、身近にすぐれた手技を観察できたのは至福のときだったという。最初は職人から警戒されたが、現場に入るときのための名入りのヘルメットが用意されるまでそう時間はかからなかった。昨年秋の落成式では岩波文庫と書き下ろし文庫という2つの文庫の間に流れた時代の変化をひいて「惜櫟荘は文庫で建てられ文庫が守った建物」と挨拶した。岩波が家を建てるとき「切ってはどうか」と言われた古い櫟(くぬぎ)の木は、風雪に耐えた老婆のように腰を90度に曲げた姿でいまも庭に立つ。この櫟にちなんで岩波は「惜櫟荘主人」と呼ばれたが、自身のことは「惜櫟荘番人」と控えめだ。57歳で時代小説に転身するまで佐伯さんは売れない現代小説の書き手であり、その前は写真家だった。そのころ出会った作家の堀田善衛、英文学者永川玲二、詩人田村隆一らのエピソードがドキュメントの合間にはさまれる。「遠回りしてきた結果ですけど、文士の時代の最後に立ち会えた気がします」見えない糸に導かれて、惜櫟荘に流れた時間と、佐伯さんと交流のあった作家たちの時間がこの本で接続され、止まっていた時間が再び流れ出す。建物だけでなく吉田五十八がデザインした机やソファ、照明器具なども修復して使っている。ゆかりの深い書や、惜櫟荘に滞在した映画監督アンジェイ・ワイダのみごとな雨の絵なども譲り受けた。「修復は完成しましたが、これからどうするか。この場に流れた時間の記録を残す場として、この家を利用できればいいなとあれこれ考えているところです」。



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