伝統的建築物の土壁の色彩




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京都発大龍堂:メール マガジン通巻 452号


伝統的建築物の土壁の色彩
_京都島原の角屋_

著者:廣川美子
発行:大龍堂書店
定価:本体価格1,800円+税
4-924726-30-3 C3052
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旧高戸家住宅の土壁の色彩・かもがた町家公園内にある伝承館と交流館の土壁の色彩
まえがき
調査対象の京都島原の角屋は、江戸時代を通じて栄えた最高の格式を誇る揚屋であり、この種のものとしては唯一の遺構である。
昭和27年に国の重要文化財建造物の指定を受けている。障子のデザインの斬新さで建築的には従来より多くの識者に識られているが、建物内の壁面もまた、本文中の表2に示すような、通称桃山土・聚楽土・浅葱土・九条土・大阪土等、伝統的土壁約十種よりなる多彩なもので、さながら高級日本壁の展示をみるようである、と壁博士の故・山田幸一先生は言われた。それらはまことに美しい。
この伝統的土壁約十種の色を標準光を内蔵した色測計を用いて、1992年2月と2000年2月とに測定したのでその変化状況を報告する。
<目次>
1.はじめに
2.調査対象および測定方法
3.測定結果
4.考察
5.各種土壁の色彩の測色値分布の前回と今回の比較
桃山土壁/江州白の赤土壁/赤大津磨き壁/聚楽土壁/中塗土壁/浅葱土壁/九条土壁/黄大津磨き壁/漆喰壁/大阪土壁
6.おわりに
<著者プロフィール>
廣川美子(ひろかわよしこ)
1942年旭川生。北海道大学大学院工学研究科修士課程修了。
北海道大学、京都大学、神戸芸術工科大学を経て、現在、
名古屋市立大学芸術工学部教授。工学博士。専門は建築環境
工学、環境心理学であるが、壁博士として著名な故・山田幸一氏
の要請で行った京都・角屋の壁の測色を契機に、伝統的な建築
物の土壁の色彩の調査と研究を行っている。
この本のまえがきを拝読した時、かって、私と親交のあつかった壁博士の故・山田幸一先生のお名前が目に飛び込んできた。
廣川美子(著者)と故・山田幸一先生の出会いそして私、なんと嬉しい偶然の積み重ねであろう。先生は学者にまれな、力のおごりのない庶民的な方で、若き研究者の育成にいつも貢献された不出世の優師である。私もご多分にもれず出版人としての「意識の持ち方」などを教わった一人である。
山田幸一先生が他界され十数年、以来日本壁研究の出版物は少なかった。ジャポニスムの一環として、次の研究成果をぜひ期待したい。
余談であるが、先生は同じ町内に住んでおられました。執筆でお疲れになっておられたとき、当サロンのコーヒーを舌づつみによく来られ、雑談したのが今や懐かしい思い出となっています……。(yy)