関西ひいては日本の前衛建築家、批判家であつた大島哲蔵氏が2002年6月5日午後8時ごろ自宅で死去されました。 この訃報を知らされた時は本当に突然のことで信じられなく大変ショックでした。同志の死は私達を震撼させました。 最後は、彼の愛用の“赤いポルシェのデザインした椅子”で身体を癒されたのでしょう、その姿で永眠されました。死因は過労からの肺炎でした。 ご家族の希望で葬式はほんの少数の関係者での「密葬」でした。 後日、「追悼式」が予定されています。情報が入り次第お知らせ致します。 (2002年7月27日に一心寺で挙行されるます)最後のお別れ会です。 私も眠れない夜が続きました。彼は本当に優師でした。だけれど落胆ばかりではいられません。優師が残された“言葉、思想”を再確認し私達21世紀の建築に熱情を持って創造して行こうではではないか。 不謹慎であるが優師が遺してくれた書物を紹介します。 また、優師はいつも相談には気楽にお答えして頂きました。大島哲蔵氏が私の質問に答えて頂いた絶筆を哀悼の気持ちをこめてここに掲載いたします。 もっと早く皆さまにお知らせしようと思ったのですが筆が進みませんでした。お詫びいたします。(yy) |
********** 大島様 冠省 いつもお世話になっております。教えてください。 1.「21世紀のデザインの動向について」 デザインとブランドの関係が深まる デザイナーを上手く使いこなすブランド(企業)は業績を伸ばすことができるデザイナーはブランドそのものに近い存在になる 企業がデザイナーを支配するようになるそしてメディアがどのデザイナーをかつぐかが重要になる インディペンデントなデザイナーが活躍する余地はますます少なくなる 本格的なデザイン批評の不在が致命的 デザインという概念の範囲が拡散しているので具体的な論点が示されないと何とも言えない 大島哲蔵 ********** |
批判家の論理体系知の泉 もう聞けずや優師の叫び 遺されし優師の叫びこころして 大島ワールド建築の正道 合掌 山岸 豊 拝 |
★《ABC:国際構成主義の建築1922−1939》 著者:シーマ・イングバーマン 訳者:宮島照久、大島哲蔵 発行:大龍堂書店 定価:本体価格2,800+税 ABC構成主義はバウハウス、ロシア構成主義、ディ・スティルと並んでモダニズムの中核グループであり、その極左派を形成していた。実現した作品は少ないが、ファン・ル工場と(1930)は近代建築史に燦然と輝いている。本書はABC構成主義の台頭と崩壊を始めて紹介する画期的な出版である。 ABC構成主義の誕生、スイスでの興隆、初期ABC様式、ABCグループの傑作、スイスにおけるABCの遺産の永続性についてなど、国際構成主義の建築家たちの組識・ABCグループの業績を年代記にまとめたもの。 ★《不気味な建築》 著者:アンソニー・ヴィドラー 訳者:大島哲蔵、道家洋 発行:鹿島出版会 定価:本体価格3,400+税 内容 ポ−やメルヴィルによって描き出された「不気味なもの」とは,モダニズムによって抑圧されていたが,一方で「崇高なもの」と結びつき,現代建築に大きな影響を与えていた。ヴィドラ−によって著わされた問題の書。 <目次> 1 住居(居心地の悪い家;生き埋め;ホームシック;ノスタルジア); 2 身体(寸断された建築;顔の喪失;トリック・トラック; 地表面の変換;サイボーグのための家); 3 空間(闇の空間;ポストアーバニズム;サイコメトロポリス; 夢幻性;放浪の建築;透明性) ★《圏外からの建築 映画・写真・鏡・身体》 著者:D.I.アグレスト 訳者:大島哲蔵 発行:鹿島出版会 定価:本体価格3,600+税 アルゼンチン出身の本書の著者ダイアナ・アグレストは、現在ニューヨークに事務所をもつ女性建築家であり、夫のマリオ・ガンデルゾナスとの共同作品は、1970年代後半から80年代にかけて、日本の建築誌でしばしば紹介された。彼女は、本書の9つの章において、映画・写真といったメディアや、鏡という道具、あるいは人間の身体や性別という問題を通して、機能主義に代表される硬直化したモダニズム都市イデオロギーの批判、街路の有する演劇性への着目、建築における男性中心主義の解体など、今日の問題意識の根幹をなす論点を縦横に展開しているのである。 <目次> 第1章 場所の観念について; 第2章 デザイン対ノン・デザイン; 第3章 理論の不幸; 第4章 建築のアナグラム―スカイスクレーパーの象徴的展開; 第5章 表現の場としての都市; 第6章 映像と建築に対するノート; 第7章 鏡の建築/建築の鏡; 第8章 表現に関する言説のための枠組み; 第9章 建築 その外部から―身体、理論、そして性 ★《デ・アーキテクチュア 脱建築としての建築》 著者:J.ワインズ 訳者:大島哲蔵、三好庸隆 発行:鹿島出版会 定価:本体価格4,200+税 本書は、常に建築ジャンルに先駆けてその時代を表現してきた、古代エジプトからピカソまでの美術を検証し、そして最先端をいくアメリカ現代美術の成果を踏まえ、現代人の心を捕える建築表現とは何かということを、展望しようとしたものである。 著者は、アメリカの建築デザイングループSITEのジェイムズ・ワインズ。巻末に前衛アーティストのポートフォリオが付されている。 <目次> 第1章 マニフェスト・マニア; 第2章 コミュニケーションの危機; 第3章 パブリック・アート/プライベート・アート; 第4章 デ・アーキテクチュア; 付録 プロジェクト・ポートフォリオ ★《都市の建築》 著者:アルド・ロッシ 編集:ダニエーレ・ヴィターレ 訳者:大島哲蔵、福田晴虔 定価:本体価格4,800+税 発行:大龍堂書店 現代建築界の論客ロッシの主著であり、いまや古典となりつつある名著の翻訳版。対症療法に甘んじる都市学者や都市計画者の都市の認識に反駁を加える彼の都市論は、初版から25年経った現在でも光彩を放っている。 ★《HETERO・1》 アドルフ・ロース研究会 著者:福田晴虔、磯野英生、大島哲蔵、小原洋二郎、前田忠直 定価:本体価格2,575円+税 B5変形231P 「近代建築のパイオニア」と称されるロース。装飾の問題やラウム・プランなど、単純なモダニストではない「謎に満ちた素顔」に着目し、問題点を解明した意欲的で啓発的な著書。 <目次> 座談:アドルフ・ロースと現代 ――福田晴虔、磯野英生、大島哲蔵、小原洋二郎、前田忠直 論文: アドルフ・ロース断想――福田晴虔 永遠の現代主義者――磯野英生 シュタイナー邸の選言的性格――大島哲蔵 ロースと「様式」の時代――小原洋二郎 アドルフ・ロースの思惟――前田忠直 コラム: 制度としての装飾の剥離――古山正雄 語られし空虚にて――根木一之 雪――竹山聖 オマージュ――竹内次男 記事: Adolf Loos by O.K――大島哲蔵 60歳記念論文集より――加藤公康・訳 “科学的な自伝”より――アルド・ロッシ 執筆者紹介・編集後記 |
(株)大龍堂書店 情報部 山岸豊 拝 |