2000/1建築と社会 特集「21世紀のデザインの動向を見る」
『新しいジャポニズム』 山岸 豊 (株式会社大龍堂書店代表取締役 文化/1948年生) 1.ドキュメント作成のすすめ 偶然必然 僕が“生とは?”と自問自答していた頃、小林秀雄の「考えるヒント」に出合いました。それは 、「複眼的洞察力」でした。 また、父のメッセージ「未は大川となる水もしばしの間は木の葉の下を潜る」を心し、僕は「人は偶然の積み重ねを必然と考え、そこに自分なりの道を見つけ喜び悲しむのでしょうか」という言葉を子に遺します。そして子は孫へ何を遺してくれるのでしようか……。 2.こころの不在 20世紀はあらゆる事象に対し「人は人に対し何をなすべきか」を忘れた時代です。哲学者達は「我思う故に我あり」「人間は考える葦である」と説き、「考える力」「知を愛するこころ=哲学」を薦めます。 人間形成は「真の対話」から生まれます。しかし20世紀は「利己主義的世界」、「無関心」が横行しました。 一体こんな日本に誰がしたのでしょうか。それは我々と物事を単眼的にしか考えることのできない日本の文化人「専門家」だったのです。真の文化人とは孔子の説く六芸(礼・楽・射・御・書・数)を備えた人間です。 3.「風土・町衆文化の検証からの実践」 大切なのは文化の成立過程です。文化はその地域の土着思考形態や風土と結合し、悠久の流れの中で幾多の変遷を繰り返し、洗練され日本文化が生まれました。風土と異文化との対話の必然性は、ル・コルビジェのスケッチ集「東方への旅」や若き日の原広司の「集落への旅」、司馬遼太郎の「街道を行く」、和辻哲郎の「風土」等で実証されました。すなわち、行動方向性に方程式が必要なのです。それは、3P(process,policy,Phirosophy)+3w(whose,What,Why)&oneI=if=人間」、根対主義的シミュレーションの実践です。 4. 新しいジャボニズム/「生きた」哲学の実践 吉村篤一は「伝統とは新しいスパイスを加味創作するもので作品は自分自身である」と言い、白井晟一は「本当の建築は50歳からだ」と説き、河野通祐は「建築家とはプロフェッショナル作家の人格に与えられる称号であると人格形成に警告を発しています。 再生が基盤にある日本建築は部材を取りかえることにより数百年の風雨天災に耐えます。建築家は単にヨーロッパを模倣するのではなく、遺伝子の叫びに耳を傾け、こころ時代の〈日本特有の美学〉を再生させ、上記の方程式を基にデザインすべきです。また建築情報を子供達に発信し、マクロな〈楽しい〉議論を深めるべきです。建築家ではない我々も自分の職業において「新町衆文化の創作」を実践する使命感を持たなければなりません。感謝合掌 (やまぎし ゆたか) |