HP内の目次へ・検索もできます! 野々部 隆雄 (TEAM87)第13回「人と自然と建築と」-----endless thema -9



第13回「人と自然と建築と」-----endless thema -9

-------建築家シリーズ?
「建築家シリーズ」に書こうと、この秋この目で見て来たばかりの建物がある。
簡単にと思ったのだが到底無理だと判り本編にてご紹介することにした。
その敷地は、高野川と賀茂川の合流地点から少し下がった鴨川のほとりにあり、敷地の軸線はまっすぐ東山の大文字に向っている。1944年に建てられた茶室のある茶苑に1963年に増築された住居部分が対比的に建っている。と、ここまで書けばお分かりになる方もさぞかし多いことだろうと思いますが。
●大玄関:表門を入り稲穂垣という少し透けて見える垣根を左に行くと右手に見えてくる。
そう、増築部は建築家吉田五十八の作品である。
そして、茶室を含む一連の数寄屋建築は、京都の名工北村捨次郎の作である。
大文字の正面に位置する茶苑に増築されたこの住居は、吉田五十八 69歳の作品である。
玄関部分は、北村捨次郎作の寄付から四帖の間、立札席とのつながりを考慮した計画がなされている。
立札席は付書院のある床tokoのついた和洋折衷のデザインで床yukaの仕上げはパーケットフローリング、床tokoの飾り棚は紐が巻かれた金属棒で吊られ、天井は杉の目透かしに銀色に塗られた目地が入れられている。モダンな造りである。そして、土間に降りる敷居には石がつかわれている。
立札席から土間にでて渡り廊下を行くと待ち合いがあり、ちょうどこの待ち合いと茶席の間からは吉田五十八設計のLivingの室内をかいま見る事ができる。
大きくL字型に開け放された窓を通して陽射しの当った奥の壁まで視線が行く。
 
●左:立札席の天井。目地は銀色に塗られている。右:渡り廊下に、木立から木漏れ日が差し込んでいる。肩の力が抜けるここちよさである。
●4点とも襖の引き手
茶席の玄関に足を踏み入れると、茶席に向う心を後押ししてくれるかのように、池に迫り出した縁がある小間は孤蓬庵の忘筌を小粋にしたような感がある。この奥にある茶席は、丁度招客の位置から庭を通し賀茂川から東山の大文字が見渡せる広間となっている。写真は広間廻りの襖の引き手である。広間と次の間の境の四枚引違の襖にはいろいろな意匠の引手が使われ、恐らく骨董を用いたと思われ、見る目を肥やしてくれる。下右の写真はすだれ吊りの金物であるがよく出来ている。随所に粋なつくりがほどこされたこの建物には、客を迎え入れる心が生き生きとした表現でつくられていて、緊張感のなかにやすらぎを見る思いである。
●左:小間の前にある廊下。忘筌を思わす。
●左:廊下をまがったところにある地窓の竪子だけの障子。右:簾掛けの金物。
北側の住居部分は伝統的な数寄屋建築とは表現のしかたが違う吉田五十八の近代和風と言われる作風だがまた思いは同じであろう。二間続きの広間のある和室には、吉田五十八好みと言われる作風の幾つかが見られる。天井に掘込まれた溝(右の写真)をつたう荒い組子の水越障子、その溝である底目地と組み込まれた照明器具のカバーの納り、天井いっぱいありながら上部の開いた襖はそれの当たる柱が回転し(下左の写真)壁のなかに納りきる、納りきった状態は天井に目地しかないために二室は十五帖(八帖と変型の七帖)一部屋に見える。壁とその見切材が角でテクスチャーが変わる八掛納り、畳からフラットにつながる縁側の床板は目地無しの突き合わせの納りであり、とても40年も前の時代のたてものとは思えないほど斬新である。
 
そしてこの八帖の広間につながるLIVINGのプロポーションのすばらしさは一体何なんだろうとさえ感じる。高い天井とそしてL字型に開口する建具はすべて解放され、内にいることさえ忘れてしまうかのような錯角を覚えるのである。また最後になったが、既存の取次ぎと取り合う大玄関も吉田五十八好みの造りが随所にみられ、腰付き障子と雨戸がこれもまた袖壁に納り切るように出来ている。写真下右は戸が納ったところである。なんとも美しい造りである。北村捨次郎と吉田五十八、先に出来た捨次郎の立札席に接点が見い出されるのではないだろうか。
 
 
●左:玄関の天井。竹のなぐり仕上げになっている。右:玄関の雨戸と腰板付きの障子が引き込まれた状態。

<バックナンバー>
2006年
1月 第1回「建築家シリーズ / アルバー アアルト」
2月 第2回「建築家シリーズ /Timo and Tuomo,Suomalainen」
3月 第3回「建築家シリーズ /アルバー アアルト その2」
4月 第4回「人と自然と建築と」---endless thema -1
5月 第5回「人と自然と建築と」---endless thema -2
6月 第6回「人と自然と建築と」---endless thema -3
7月 第7回「人と自然と建築と」---endless thema -4
8月 第8回「人と自然と建築と」---endless thema -5
9月 第9回「人と自然と建築と」---endless thema -6
10月 第10回「人と自然と建築と」---works 01
11月 第11回「人と自然と建築と」---endless thema -7
12月 第12回「人と自然と建築と」---endless thema -8




DAIRYUDO SHOTEN Co.,Ltd  TEL:075-231-3036 FAX:075-231-2533