HP内の目次へ・検索もできます! “海外旅日記” 山本剛史氏(Takeshi YAMAMOTO)  [Profile:山本剛史(Takeshi YAMAMOTO)]

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京都発大龍堂:メールマガジン通巻7359号 2010年8月18日

京都建築フォーラムでは、この度、編集プロダクション・(有)古都デザイン KOTO DESIGN Inc.山本剛史氏(Takeshi YAMAMOTO)のご協力を得て“海外旅日記情報”の新しいコーナーを創設いたしました。
今後も充実していきますので乞う期待ください。[京都建築フォーラム事務局

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“海外旅日記情報”デンマークの旅日記

●フィン・ユール邸建築プロジェクト
岐阜県の高山市で北欧の名作椅子のライセンスをとって、手づくりにこだわって椅子づくりをしているメーカーがある。そのメーカーとのお付き合いは、2001年に古い民家で開催した「北欧モダンと和の暮らし展」というのを企画したことにはじまります。築100年の古民家と北欧家具を対峙させる試みは、私の思わくどおりとなり、いいものはどの時代のものを合わせても、見劣りしないということを確認したイベントとなった。もちろん、十分にコーディネートすることは大切なのですが……。今回の旅は、そのメーカーの社長を含めた関係者及び北欧椅子ファンの方々と一緒に、デンマークの地方都市を巡る旅行でした。一般のツアーとは違い、かなり目的を絞ったものだったので、短い期間ではありましたが、かなり密度の濃い旅行となりました。私は、そのメーカーの北欧椅子のカタログを制作しているのですが、実際の北欧を知らずに北欧椅子のカタログを制作して来たので、今回はそのこともあってこの旅行に参加しました。目的のひとつに、デンマークの建築家で有名なフィン・ユールの自邸を訪れるというのがありました。主のいなくなった住宅は、大抵の場合その家にあったものは散逸してしまい、住まわれていたころの面影がなくなってしまう場合が多いのですが、散逸をおそれたファンがその家を買い取り、そのまま隣にあったオードロップゴー美術館に寄附されました。今、私たちが見学できるのもその方のおかげです。このフィン・ユール邸を2012年に生誕100年を記念して高山に建てるという「フィン・ユール邸建築プロジェクト」がNPOとして進んでいます。北欧と日本の文化の交流拠点として、多くの人に楽しんでいただけるのではと思います。
●北欧の名作椅子
日本ではここ数年、北欧ブームが加熱し当時の名作家具は異常なほど高騰し、気軽に購入するというのは難しくなってきましたが、デンマーク本国でもかなり数量は減っているように思います。とはいえ、街にあるレストランや、窓から見える一般の人たちの住宅の中では、当たり前のように名作椅子と呼ばれるものが使われています。一番多いのは、やはりアルネ・ヤコブセンのセブンチェアやスワンチェア、モーエンセンのシェーカーチェア、ウェグナーの椅子などです。ごく自然に普通に使われているという感じです。日本のように安価な量産家具というのはあまり見かけませんでした。「良いものを永く大切に使う」というのがこの国の良さでもあります。いまの時代、手づくりにこだわってものづくりをしているメーカーは少なくなっています。デンマーク本国でもスネーカーマスターが主宰するキャビネットメーカーは無くなりつつあります。良い材料がないというのもあるし、職人の高齢化というのもあります。時間をかけてゆっくりつくるというのも時代に合わなくなっているのも確かです。人件費の安い中国でつくられる椅子もあるようですが、最終的に選ぶのは私たち生活者です。単に「名作椅子を売るのではなく、生活の空間を共に考える」そんな椅子づくりが大切です。
●デンマークの住宅
デンマークの若い人たちの表情を見ていると、日本人の性格というかシャイな感じが、何となく似ている感じがします。北欧の住宅は日本の住宅の影響を受けたところがたくさんあるようですが、住まい方やものづくりに対する姿勢みたいなものも似ているのではないでしょうか。長い暗い冬をどの様に快適に暮らすかというのが第一にあるとは思いますが、ゆったりとくつろぎ生活空間をまるごと楽しむライフスタイルは私たちも見習はなければと思います。デンマークの住宅は、太陽の光をたくさん部屋の中に取り込むという目的もありますが、カーテンをしないで部屋の中を見せるオープンのところが多く、道を歩いていると生活空間が丸見えなのです。すべてがそうというわけではありませんが、ガラス張りの空間はハッとさせられます。どの家を覗いてみても、無駄なものがなくすっきりとしたインテリアです。窓際の花は、通る人も楽しませてくれます。
伝統的な空間の中に、モダンなものをうまく取り込む感覚は、先に書いた和の空間にモダンな椅子を合わせる感覚に似ています。逆から見ると、どんな空間にも合う品質の良いものが巷にあふれていて、安易なものづくりをされたものが無いと言った方が良いかもしれません。
●環境に配慮したまちづくり
デンマーク郊外の道路にはほとんど信号がなく、交差点はロータリー式でした。交通量が少ないというのもあるかもしれませんが、いかにエネルギーを使わないで、風景にも配慮してして暮らすのかということが随所に感じられます。デンマーク人の自転車好きもそのひとつかもしれません。主な都心部には自転車専用の道路があり、マナーも守られています。止まるときの合図、曲がるときの合図など私が小さい頃は教えてもらいましたが、最近の日本では見かけなくなっているので、なんだか懐かしさを憶えました。また、夕方の5時になると、飲食以外の主なお店は閉まってしまいます。白夜で夜は長いのにショッピングはできなくなります。これは観光客サイドの視点かもしれませんが……。長い時間お店を開けて、お金を稼ぐよりも、家族や友人、また恋人と楽しむ時間を大切にしているように見えます。この事は、旅の最後に行ったチボリ公園でも感じました。夜遅くまで大人達がアトラクションを楽しんだり、音楽や食事を楽しんだりしている光景はほんとうにうらやましかったです。こんな公園がコペンハーゲンの駅の前、街の中心部にあるのです。[
KOTO DESIGN Inc. Takeshi YAMAMOTO August 2010]
編集プロダクション
(有)古都デザイン KOTO DESIGN Inc.
山本剛史(Takeshi YAMAMOTO)
604-8235 京都市中京区堀川通錦小路下ル錦堀川町650 柴田ビル2F
TEL:075-257-3810 FAX:075-257-3811
kotodesign@mocha.ocn.ne.jp
[Profile:山本剛史(Takeshi YAMAMOTO)]
1960年1月生まれ
20代の頃より大阪のデザイン会社で修行。
1999年、KOTO DESIGN Inc.を設立。
大阪成蹊大学 芸術学部 情報デザイン学科 非常勤講師
スペースデザインカレッジ 講師
主な仕事に、株式会社熊倉工務店『会社案内』、『近代建築の夜明け』 淡交社刊の企画、編集およびデザイン。株式会社キタニ『Danish Furniture Collection』北欧デザインの椅子のカタログ。スペースデザインカレッジ『学校案内』『生活のデザイン−つくる人女性編・男性編』『生活の道具−つくる人』別冊太陽『暮らしの中の漆器』『比叡山』『千利休』『小堀遠州』『親鸞』『長谷川等伯』など装丁の仕事 『イケズ花咲く古典文学』『龍馬の知られざる素顔』『京都鬼だより』『モノ語り日本史・歴史のかたち』淡交社刊など『窓から読みよく近代建築』『都市美』『住宅設計のレッスン』学芸出版社など多数その他、カタログ、パンフレット、ポスター、DMなど
会社設立当初より建築関係やまちづくり関係の人たちと交流をもつようになり、従来の商業ベースにのった制作物よりも、より自分の興味のあるものを手がけるようになった。「古民家の改修」や「土塀版築のワー クショップ」また『北欧の椅子−構造とくつろぎ展』『京町家で楽しむ北欧椅子』『北欧モダンと和の暮らし展』などの企画展の開催もその一環。

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